手付金を立て替えると、業者が宅地建物取引業法に違反します。禁止されている形は5つです。手付金を貸し付ける、立て替える、分割で受け取る、後払いにする、約束手形で受け取る。
しかし、買主から頼まれた場合はどうなるのか。自分の財布から出した場合も同じなのか。ここで迷うと思います。
どちらの場合も違反になります。当たる行為、担当者と会社に来るもの、手付が用意できない買主にできることを、順に書きます。
貸付け、立替え、分割、後払い、約束手形が信用の供与に当たる
宅地建物取引業法47条3号は、業者が手付について貸付けその他の信用の供与をして、契約の締結を誘引することを禁じています。信用の供与に当たるのは、手付金を貸し付けること、立て替えること、分割で受け取ること、後払いにすること、約束手形で受け取ることです。
条文が禁じる対象は、契約の締結を誘引する行為です。貸した金が契約を取るために使われたかどうかを見ます。
買主から頼まれて立て替えても、自腹で立て替えても、業者が違反する
買主が分割で払いたいと申し出て、業者がそのとおり分割で受け取れば、業者が違法行為をしたことになります。全日本不動産協会は、買主からの申出であっても行政処分の対象になる、と書いています。
条文は、手付の金がどこから出たかを問いません。会社の金でも、担当者の財布から出た金でも、あとで返してもらう約束があっても、手付についての信用の供与であることは変わりません。
担当者が罰せられ、会社は業務停止を命じられる
違反した本人に、6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。従業者が仕事の上で立て替えたときは、本人を罰したうえで、会社にも罰金が科されます。
会社はさらに、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じられます。情状が特に重いときは、免許の取消しになります。根拠は、宅地建物取引業法の81条2号、84条2号、65条2項2号、66条1項9号です。
立て替えた金を、業者は取り戻せないことがある
分割で受け取る取り決めには、効力がありません。大阪高裁は、分割払いの合意は手付の要物契約性を無視するもので採用できない、と判断しました。全日本不動産協会が紹介しています。
手付は、金を実際に渡して初めて成立する契約です。全額を渡していなければ、手付の契約は成立していません。手付が成立しないまま、売買契約だけが進みます。買主が手付を放棄して解除する道も、使えません。
手付が用意できない買主には、業者は何をするか
立て替える前に、打てる手が2つあります。1つ目は、振込の日を契約の日に揃えることです。
不動産流通推進センターの相談事例では、契約書に署名した日の午後3時までに振り込まれるなら、47条3号に当たらないとされています。翌日以降にずらすと、信用の供与と判断されることがある、とも書かれています。契約の時間を、買主が振り込める時間に合わせて決めます。
2つ目は、手付なしで契約を結ぶことです。同じ相談事例で、双方の合意によるものであれば47条3号にも39条にも触れない、とされています。ただし、売主も買主も手付解除ができなくなります。売主の意向を先に確かめます。
仲介手数料を立て替えても、47条3号には当たらない
47条3号が名指しするのは手付です。仲介手数料は書かれていません。
仲介手数料は、媒介契約にもとづいて業者が受け取る報酬です。売買契約が成立する条件でもなく、契約を解除する権利のもとにもなりません。立て替えても、買主が売買契約に縛られる度合いは変わりません。
ただし、業法に当たらないからといって、社内で自由に決めてよいわけではありません。値引きの決裁と社内規程の話として残ります。
よくある疑問
Q:買主の家族が手付金を出す場合も、違反になりますか。
A:47条3号が禁じているのは、宅地建物取引業者が手付について信用の供与をすることです。買主の家族が出す分は、この条文の対象になりません。
手付金が足りないだけで契約が流れると、その場では惜しいと感じます。そこで立て替えると、担当者本人に拘禁刑か罰金が、会社に業務停止が来ます。振込の日を契約の日に揃えられないか、手付なしで結べないかを、契約の前に確かめてみてはいかがでしょうか。





