私は採用の説明会で使う社員インタビューの質問案を作っています。若手社員に何を聞くかを決めて、答えてもらって、記事にします。毎回やっている作業です。
質問例を調べると、50問、100問、200問と並べた記事が出てきます。どれも数が多く、カテゴリーごとに整理されています。読むと質問は増えますが、増えたぶんをどう扱うかは書かれていません。
この記事が渡すのは、増やした質問から何を落とすかの基準です。基準は1つで、その質問の意図が誰の側にあるかです。
質問をよくするほど、会社が語りたい話が増える
質問例の記事は、質問の選び方も一緒に書いています。
上位に出てくる記事は、質問を相手に合わせて変えろと書いています。ただし、合わせる相手が違います。自社の採用ペルソナ、伝えたい強み、答える社員の職種と経験年数、そしてインタビューを通じて伝えたいメッセージの焦点。この4つが調整の軸として並んでいます。
伝えたい強みも、伝えたいメッセージの焦点も、会社の側にあるものです。会社の側にある軸で質問を足すと、会社が語りたい話が増えます。
私も同じことをしました。質問案に「お客様に言われて忘れられない言葉は何ですか」を入れました。良い質問だと思ったからです。感謝された場面が出れば、仕事の手応えが伝わります。
学生が見ているのは、給与と仕事内容である
その質問に答えた記事を読むのは、応募してくる人です。その人たちが見ているのは、給与と仕事内容です。マイナビの2026年卒 大学生キャリア意向調査3月によると、エントリーする際に注目している項目は、給与が65.7%、仕事内容が63.3%でした。回答したのは1,971名です。上位10項目に、社員の話は入っていません。
私が採用しているのは新卒と、中途でも25〜35歳前後までの人です。中途の側を同じ形で測った調査は見つけていません。
私が入れた質問は、給与にも仕事内容にも当たっていませんでした。ここで気づきました。私が足していたのは、会社が語りたい話でした。
先輩社員に魅力を感じなかった学生が、13.3%いる
社員の話が上位に入っていないだけなら、読まれないだけで済みます。そうではない数字が、同じ調査にあります。
企業について調べる中で志望度が下がった理由に、「先輩社員に魅力を感じなかった」が13.3%あります。15番目に入っている項目です。
この13.3%が社員インタビューを読んだ結果かどうかは、調査に書かれていません。言えるのは、先輩社員が出てくることが志望度を下げる方向にも働いている、というところまでです。社員が出てくる場面は志望度を上げる方向にしか働かない、という前提は、ここで外れます。
全員に全部聞いたあと、どの回答を落とすか
質問を減らす話に見えますが、私は減らしません。全員に全部聞いて、良い回答をしてくれたものだけを残します。人によって質問を絞ると、絞った時点で誰かの良い回答が出てこなくなるからです。
落とすのは、聞いたあとです。私が全員に聞いているのは、次の11問です。1問ずつ、その質問が何を引き出すために置かれているかを書き出して、意図が会社の側にあるか、読み手の側にあるかを見ます。
意図が会社の側にある質問から見ます。お客様に言われて忘れられない言葉は、仕事の手応えを見せるための質問です。仕事のやりがいは、働く動機を語ってもらうための質問です。この会社の魅力は、他社との違いを社員の口から言わせるための質問です。3つとも、引き出したいものを決めているのは会社です。落とす候補になります。
意図が読み手の側にある質問は、給与と仕事内容に当たります。1日の流れは、入社後の時間の使い方を先に見せるための質問です。担当している案件の中身は、仕事内容を具体的な単位で見せるための質問です。残業がどれくらいかは、募集要項に書いた数字が実際にどうなっているかを確かめるための質問です。給与がどう決まるかと、入社してからいくら上がったかは、上がり方を見せるための質問です。5つとも、引き出したいものを決めているのは読み手です。残す候補になります。
残る3問は、意図がどちらにも寄ります。入社の決め手は、選んだ理由を語る質問です。前職との違いは、中途の人が自分のいまと引き比べるための質問です。失敗した話は、うまくいかない場面を先に見せるための質問です。この3問は、返ってきた答えに固有名詞か数字が入っていれば残し、入っていなければ落とします。読んだ人が自分と引き比べられるのは、そこだけだからです。
11問より増やしたいなら、質問例の記事から足して構いません。足した1問ずつに、同じ形で意図を書き出します。
私はこの基準で、最初に良い質問だと思った「お客様に言われて忘れられない言葉」を落としました。
次の説明会で使う質問案があるなら、1問ずつ意図を書き出して、聞いたあとに落とす側から並べ替えてみてはいかがでしょうか。



