ピューリタンの国アメリカにとって、AIは何の転換点なのか?

アメリカは、コンピューター、インターネット、SNS、スマートフォン、そしてAIと、新しい技術をいつも最初に生み出し、世界に広めてきました。その理由を、お金の多さや軍事力の強さで説明する人は多いと思います。私は、それに加えて、アメリカという国の始まりにある神との関係が効いていると考えています。

しかし、神の国を作ろうとした人たちが始めた国が、なぜ人間が作るAIにここまで力を入れるのでしょうか。

彼らは、AI開発や宇宙開発をしているのではなく、神を探した先に神を作ろう、自身が神になろうとしているのです。

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アメリカは、神の国を作ろうとしたピューリタンが始めた国である

アメリカを始めたのは、イギリスで自分たちの信仰を守れずに国を出たピューリタン(清教徒)です。ピューリタンは、イギリス国教会の改革を求めたプロテスタントの一派で、本国で圧力を受けて大西洋を渡りました。

ピューリタンが新大陸で目指したのは、神の教えどおりに暮らす共同体、つまり神の国でした。

1630年、マサチューセッツ湾植民地へ向かう船の上で、指導者のジョン・ウィンスロップは「われわれは丘の上の町となる」と説教しました(全米人文科学基金の解説)。世界中から見られる手本の共同体になる、という意味です。

ピューリタンは、経済的な成功を神の祝福と受け取った

では、神の国で人はどう生きればよいのか。ピューリタンが受け継いだカルヴァン派には、救われる人は神があらかじめ決めている、という予定説があります。自分が救われる側かどうかは、本人には分かりません。

ピューリタンは、勤勉に働いて経済的に成功することを、神の祝福であり、自分が神に選ばれているしるしだと受け取りました。

信仰と仕事の成功をこう結びつけて説明したのは、社会学者のマックス・ヴェーバーです(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』1904〜05年)。ヴェーバーは、ここから資本主義の精神が生まれたと論じました。

アメリカは、外的宇宙と内的宇宙の両方で神を探した

西へ国土を広げたアメリカは、20世紀には宇宙へ人を送るようになります。アメリカは、地球の外の宇宙(外的宇宙)と、人の心の内側(内的宇宙)の両方で、神を探しました。

外的宇宙で神を探した例が、1968年のアポロ8号です。月を回る軌道の上から、3人の宇宙飛行士は旧約聖書の創世記を読み上げました。最初の一文は「はじめに神は天と地とを創造された」です(NASA)。

内的宇宙で神を探した例が、1962年にカリフォルニアで開かれたエサレン研究所です。瞑想や身体の実践を通じた、精神の変容と人間の潜在能力の探求を掲げました(エサレン研究所)。

終末が来なかったのを見た若い世代ほど、神を信じなくなった

宇宙でも人の心の内側でも神を探したあと、アメリカでは神を信じる人が減っていきました。進化論のように、人間の成り立ちを神の創造を使わずに説明する科学が広く知られたことが、その背景にあると思います。

1970年代には、「終末は近く、そのときキリスト教徒は救われる」と説く本が売れました。ハル・リンゼイの『The Late Great Planet Earth』(1970年)は、1970年代にいちばん売れたノンフィクションです(全米人文科学基金)。いまの70代、80代が若かったころです。

その終末は来ませんでした。いまの若い世代は、それを見て育っています。

ピュー・リサーチ・センターの調査では、キリスト教徒と答えた成人の割合は、2007年の78%から2023〜24年の62%に下がりました。18〜24歳でキリスト教徒と答えた人の割合は46%で、70歳以上の80%を大きく下回ります。

神を信じる人が減っても、成功を目指して働く生き方は残りました。ヴェーバーは同じ本の最後で、信仰の精神が抜けたあとも利益を追う仕組みだけが残り、人をその中で働かせ続けると書いています。英語では「鉄の檻(iron cage)」の名で知られる一節です。

神を見つけられなかったアメリカの人たちは、神を作るか、神になるかへ向かった

アメリカの人たちは、外に神を探しても見つけられませんでした。そのあと、本人も意識しないところで、2つの向きが生まれたと私は考えています。神を作る向きと、神になる向きです。

どちらの向きも、神を見つけることをあきらめ、人間が自分の手で神の代わりを用意しようとする点で同じです。

人間が、自分たちの外にいる神を作る

1つ目は、人間が、自分たちの外にいる神を、自分たちの手で作る向きです。ピューリタンは、正しい答えを神に求めました。いまの人は、答えをAIに求め、判断をAIに委ね始めています。外にいる何かに答えを求めたい心理は残ったまま、その相手を自分たちで作ったのだと思います。

人間が、自分で神になる

2つ目は、人間が、自分で神の力を持とうとする向きです。この考えは、内的宇宙で神を探していた1960年代に、すでに出ています。編集者のスチュワート・ブランドは、1968年の『ホール・アース・カタログ』創刊号の最初の一文に「われわれは神のようなものだ。ならば、うまくやったほうがいい」と書きました。スティーブ・ジョブズは2005年のスタンフォード大学の卒業式で、このカタログを若いころの愛読書として挙げています。AIで世界を作り変えようとする力の根っこにも、同じ心理があると思います。

よくある疑問

Q:AIを作っている人たちは、自分が神になろうと考えているのですか。

A:そう口にしている人は多くないと思います。ここで書いているのは、本人も意識していない深層心理の向きで、神を探してきた国の思想が、AIに向かう熱量の根っこにあるという私の見立てです。

アメリカは、AIで、神を探す国から、神を作り神になろうとする国へ変わり始めた

ここまでの出来事を順に並べると、アメリカが神とどう関わってきたかが一本の線でつながります。神の国を作ろうとして海を渡り、経済的な成功を神の祝福と受け取り、外的宇宙と内的宇宙で神を探した。科学が広まって神を信じる人が減ったあと、神を作り、神になろうとしている。

私は、AIをきっかけに、アメリカが神を探す国から、神を作り神になろうとする国へ変わり始めたと考えています。そこがAIの転換点です。

日本はこれまで、アメリカの技術を少し遅れて受け入れてきました。アメリカのAIのニュースを見るとき、その技術で彼らが何になろうとしているのかを考えてみてはいかがでしょうか。

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