代理店業、仲介業、プラットフォームビジネスは、売り手と買い手のあいだに立って稼ぐ仕事です。AIエージェントが探して、比べて、手続きまで進めるようになると、あいだに立つ理由が問われます。
では、AIエージェント時代に、この3つの業態はどうなるのでしょうか。
一人一人が自分専用のAIエージェントを持つ時代は、スマホより速く来る
AIエージェントはこちらの行間を読んでくれるので、スマートフォンやインターネットより速く浸透すると私は考えています。 スマートフォンは、人がアプリの操作を覚えて使う道具でした。AIエージェントは、道具のほうが人の言葉に合わせてきます。日本での広がり方の数字は、以下のとおりです。
| 比べる点 | インターネット | スマートフォン | 生成AI |
|---|---|---|---|
| 何を数えたか | 使っている人の割合 | 持っている人の割合 | 使ったことがある人の割合 |
| 日本の数字 | 1997年9.2%、2002年54.5% | 2011年14.6%、2016年56.8% | 2023年度9.1%、2024年度26.7% |
| 伸び方 | 5年で約6倍 | 5年で約4倍 | 1年で約3倍 |
数え方がそれぞれ違うので、そのまま並べて比べられる数字ではありません。出典は、インターネットについては内閣府の資料(総務省の数字を引用)、スマートフォンについては総務省の情報通信白書(平成29年版)、生成AIについては総務省の情報通信白書(令和7年版)です。
同じ物差しで比べられる数字もあります。ChatGPTが月に1億人に使われるまでは公開から約2か月で、TikTokの9か月、Instagramの2年半より短くなっています(TIME)。
一人一人がスマートフォンを持つことが当たり前になったように、一人一人が自分専用のAIエージェントを持つ時代へ移っていきます。
会社は、お客様の相手をするAIを提供し始めている
お客様が自分専用のAIエージェントを持つのと並んで、会社のほうも、お客様の相手をするAIを提供し始めています。 アメリカの2つの例は、以下のとおりです。
| 比べる点 | Amazonの「Rufus」 | ChatGPTの「Instant Checkout」 |
|---|---|---|
| 提供した会社 | Amazon | OpenAI |
| 提供を始めた時期 | 2024年7月(アメリカの全利用者) | 2025年9月29日 |
| お客様がそのAIでできること | 商品について質問する、比べる、おすすめを聞く、注文を確かめる | ChatGPTの会話の中で、Etsyの出品者の商品を買う |
| 売り手との関係 | Amazonで売っている商品を案内する | Shopifyの加盟店も順に加わる。売り手は1回つなぐだけで、複数のAIエージェントから売れる |
出典は、RufusについてはAmazonの発表、Instant CheckoutについてはStripeの発表です。
3つの業態は、お客様との最初の会話を持つ側と、持たない側に分かれる
お客様の相手をするAIが広がると、3つの業態の役割は、お客様が最初に話しかけるAIを誰が持つかで変わると思います。 3つの業態に当てはめると、以下のとおりです。
| 業態 | 今の役割 | お客様の相手をするAIが広がると |
|---|---|---|
| 代理店業 | 売り手の代わりに売る | 売り手が自分でお客様の相手をするAIを提供すると、役割が重なる |
| 仲介業 | 売り手と買い手をつないで手数料をもらう | 複数の売り手を比べる中立の相談相手として、役割が残る。ただし、中立の相談相手になるAIは、ほかの会社も提供できる |
| プラットフォーム | 売り手と買い手が出会う場を提供する | 自分の場の中に、お客様の相手をするAIを置く。ChatGPTのような汎用のAIも、新しい場になる |
Instant Checkoutでは、買い物がChatGPTの会話の中で終わります。お客様は、売り手のサイトも、比較サイトも開きません。会話を持っているAIの会社が、場を提供する役も、売り手と買い手をつなぐ役も、同時に担っています。
インターネット上の情報は、どのAIも学習しているので差にならない
インターネット上に公開されている情報は、どの会社のAIも学習できるので、差になりません。 OpenAIは、モデルを学習させるデータの出どころの1つに、インターネット上で公開されている情報を挙げています(OpenAIのヘルプ)。どの会社がお客様の相手をするAIを出しても、公開されている情報だけで答えるなら、答えは似てきます。
差になるのは、その会社だけが持っている情報です。 それも、データとして集めた情報より、担当者が足を使い、お客様と向き合って拾ってきた情報だと私は考えています。お客様と向き合わないと分からないことは、インターネットに上がっていないからです。
今のAIには、お客様のところへ足を運ぶ身体がない
何よりも、今のAIには身体がありません。 お客様のところへ足を運び、顔を合わせて話を聞くことは、AIにはまだできません。身体を持って現実の世界で動くフィジカルAIが伸びるのは、ここから先の話です。
3つの業態は、足を使ってお客様から集めた情報で、AIの答えに差を出せる
お客様が最初に話しかけるAIを誰が持っても、AIの答えの差は、そのAIが使える情報で決まります。そのため、代理店業・仲介業・プラットフォームビジネスのうち、足を使ってお客様と向き合い、情報を集めてきた会社は、AIエージェント時代にも、AIの答えに差を出せると私は考えています。
あなたの会社にしかない情報は、どこで、どうやって集めたものでしょうか。







