AIエージェント時代に残るのは、意味を語れる人と、問いを立てられる人だと思います。仕事に関わる人が増えるほど発揮される能力は下がり、しかもお客様自身がAIを使うようになるからです。
しかし、作業を丁寧にこなす人にも価値はあるはずだ、と考える方も多いのではないでしょうか。
仕事に関わる人が増えるほど、責任が分散して発揮される能力が下がる
心理学では、グループで取り組むことで個人の努力量が下がる現象を「社会的手抜き」と呼びます(日本心理学会「心理学ワールド」108号、真島理恵)。
真島さんの記事は、ウィリアムズらが1981年に行った実験を紹介しています。大学生がグループで叫ぶ課題で、1人ひとりの声量が評価されない条件では、2人以上になると叫ぶ量が下がりました。
人が増えれば増えるほど責任が分散し、1人ひとりが発揮する能力が下がります。
仕事に関わる人が増えるほど、出来上がるものが最初のキーワードから離れていく
人が増えると、伝言ゲームと同じことも仕事で起きます。
お客様が「若い人に届けたい」と言ったとします。営業担当はお客様の言葉を企画担当に伝え、企画担当は制作担当に伝えます。間に入った人は、聞いた言葉を自分の言葉に言い換えて次へ渡します。制作担当に届くころには「流行りの見た目で」に変わっていることがあります。
間に入る人が増えるほど、出来上がるものは、お客様が最初に言ったキーワードから遠くなります。
作業だけをしているのであれば、付加価値は下がる
人が間に入るたびに責任は分散し、出来上がるものは最初のキーワードから離れます。付加価値を加えるために人が入るなら良いのです。作業だけをして次へ渡すなら、付加価値は下がるだけです。
作業だけの仕事は、すでに減りはじめています。オンラインでフリーランスに仕事を頼むサイトでは、ChatGPTの公開から8か月で、文章作成やコーディングのように自動化されやすい仕事の求人数が、手作業中心の仕事と比べて21%減りました。画像生成AIの登場後は、画像制作の求人数が17%減りました。同じ研究は、残った仕事のほうが複雑で、報酬も高い傾向にあると報告しています(Demirci、Hannane、Zhu「Who Is AI Replacing?」Management Science 71巻10号、2025年)。
作業だけをしているのであれば、付加価値は下がり、仕事そのものも減っていきます。
お客様もAIを使うので、問いを立てられない人に頼む理由がない
お客様の側も、AIを使いはじめています。
総務省の令和7年版情報通信白書によると、日本で生成AIを使ったことがある人は、2024年度の調査で26.7%でした。2023年度の9.1%から約3倍に増えています。20代では44.7%で、米国は68.8%、中国は81.2%です。
ChatGPTの有料プラン(Plus)の料金は、2026年7月1日時点で月3,000円です(Business Insider Japan、2026年7月2日)。お客様は月3,000円程度で、自分でAIに聞いて答えを手に入れられます。
お客様もAIを使うので、問いを立てられない人に頼む理由はありません。
問いを立てるとは、何を解くべきかを決めること
AI時代に問いを立てる力が要るのは、お客様もAIを使うので、答えを出すだけならお客様が自分でできるからです。お客様がまだ言葉にできていない困りごとを見つけ、「本当に解くべきことはこれではないか」と示すのが、問いを立てることです。
意味を語るとは、AIが出した答えがお客様にとって何を意味するのかを、お客様の言葉で説明することです。
問いを立てる人はAIに聞く前の仕事を、意味を語る人はAIが答えたあとの仕事を受け持ちます。
作業をこなしても育たない人もいる。そういう人は最初からAIを使いこなす
作業が減ると、若手が作業をこなしながら育つ場もなくなる、という心配があります。
しかし、作業をこなしても育たない人もいます。
そういう人は、最初からAIを使いこなします。
あなたは、仕事のどこで意味を語り、問いを立てているか
AIエージェント時代に残るのは、意味を語れる人と、問いを立てられる人です。
作業だけなら付加価値は下がり、お客様は自分でAIを使って答えを手に入れるからです。
いまの仕事のうち、あなたが意味を語り、問いを立てている場面は、どこでしょうか。







