外注費を減らすなら、内製化の前に、いま雇っている人の空き時間を数える

外注費を減らそうとして、私は1枚の表を作りました。外に出している仕事の時間単価、いま時給で雇っている人の時給、月額で使えるAIエージェントの料金。3つを縦に並べて、安い順に仕事を落としていけば答えが出ると思っていました。

同じ悩みで検索すると、返ってくる答えはだいたい揃っています。中核の仕事は社内に置き、そうでない仕事は外に出す。外注は変動費で、社員は固定費。どれも間違ってはいませんが、全部が、内製化とは新しく人を雇うことだ、という前提の上に乗っています。

この記事が扱うのは、その前提の外側にある枠です。すでに雇っていて、すでに払っていて、まだ使われていない時間。渡すのは、外注費を削る前に何を数えるかと、数えた結果によって判断がどちらへ倒れるかです。

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外注を減らそうとすると、たいてい人を増やす話になる

業務委託の契約を一覧にして、金額の大きいものから見ていく。減らせそうなものに印を付ける。ここまでは滞りなく進みますが、止まるのはその次です。印を付けた仕事を誰がやるのか、という問いが出てきます。

社内を見渡しても、手が空いている人が思い浮かびません。だから採用の話になり、求人の費用と教える時間が乗るので、外注のままにしようという結論に戻ります。

この一周のあいだ、一度も出てこない数字があります。いま社内にいる人が、契約している時間のうち何時間を実際に使っているか。この数字を持たないまま、社内には余裕がないという判断だけが下されています。

すでに払っている時間に仕事を載せても、支払いは1円も増えない

比べる相手の値段を先に出しておきます。年収600万円の社員なら、法定福利費の事業主負担が給与の約15%乗るので、会社が払うのは690万円です。年間休日を120日、1日8時間とすると年間の労働時間は1,960時間なので、1時間あたり約3,520円になります。

外注の単価は請求書に書いてあるので誰でも言えるのに、社員の単価は誰も言えません。この計算を一度もしていない会社のほうが多いはずです。

そのうえで一歩進めます。3,520円は、その人の枠が全部埋まっている場合の値です。外注は使った分だけ請求書が来る変動費ですが、給与は忙しくても暇でも同じ額が出ていく固定費です。契約している時間の半分しか使っていないなら、残りの半分に新しい仕事を載せたときの追加費用はゼロになります。

内製と外注を比べる計算式は、よく次の形で紹介されています。外注の年額と、人件費に採用費と教育費と設備費を足した年額を並べて比べる。この式には、いま雇っている人の空き時間を入れる場所がありません。だから空きがどれだけあっても、計算の上には一度も現れないまま結論が出ます。

兼務している人の1時間は、専任の人の1時間より高くつく

安い順に落としていけばいい、と私は思っていました。ところが、いちばん安いところへ落とそうとした瞬間に、その枠がすでに埋まっていないことに気づきました。埋まっていなかったのではありません。埋めていなかったのです。契約している時間のうち半分ほどが、何も割り当てられないまま毎週過ぎていました。

もう一つ外していました。この仕事なら社内でいちばん詳しい人に頼むのが早い、と考えて名前を挙げたのですが、その人は管理側の別の仕事もいくつか持っていました。しかも時間単価が高い。単価が高いことと、時間が足りないことを、私は「あの人は高いから」の一語でまとめていたわけです。

この2つは別の話で、単価は金額の話、時間は上限の話です。まとめて扱うと、どちらの対策も打てません。上限のある人に手を動かす作業を積んでいくと、その人が判断する番になったところで順番待ちが起き、外注を減らしたはずなのに全体が遅くなります。

ここから先は検証された話ではなく、私が使っている決め方です。時間に上限のある人には、その人でなければ決められないことだけを残し、手を動かす部分は上限のない側へ移します。

空いている枠から埋める。外注を削るのはその次である

順番を書きます。まず、いま契約している人の枠のうち、実際に使われている時間を数えます。次に、その空きで吸収できる作業を外注から移します。移しても残った分を、外注に置きます。それでも足りないときに、新しく人を雇います。

新規の採用を先頭に置けば、冒頭で書いた一周にそのまま戻ります。数えるところを飛ばしてしまうと、何を移せるのかを決められません。

ただし、この順番が効かない場合があります。空きを数えて、移せる作業を移して、それでも外注費が減らないとき。そこで外に出していたのは、作業ではありません。外部が持っている関係か、社内にない判断のどちらかです。

関係は時間では買えず、判断は手順書では移せません。ここで書いた順番が使えるのは、外に出していたものが時間で測れる作業だった場合だけです。

AIエージェントに置き換えるかは、空いた時間に入れる仕事があるかで決まる

同じ数え方が、AIエージェントを入れるかどうかの判断にも当たります。日程調整、期限の知らせ、結果の連絡。こうした作業を人がやるのと、AIエージェントにやらせるのとで、どちらが安いのか。

空きが余っているなら、置き換えても支払いは1円も減りません。時間で契約している以上、空き時間はすでに払っているからです。作業をAIエージェントへ移すと、空いた時間がそのまま遊びます。月額の料金だけが丸ごと上に乗ります。

空きが埋まっているなら、答えは逆を向きます。置き換えた分だけ、その人の次の1時間に別の仕事が入るからです。比べているのは、人の時給とAIエージェントの月額ではありません。その人の次の1時間に入れる仕事があるかどうかです。同じ作業、同じ単価、同じ道具で、結論が正反対になります。

確かめれば分かることを、3回とも懸念の形で出していた

この判断を、私はAIに相談しながら進めていました。返ってきた論点は、3回とも同じ形をしていました。

1回目は、外注先との契約が月額固定か従量かを、先に確認が要る1点として出してきたことです。面接の数に応じて頼んでいるので従量に決まっていますし、契約書を開けば1分で分かります。2回目は、日程調整をAIエージェントに任せる設計で、担当者の予定表を見られる権限が要る、と書いてきたことです。一次面接を担当していたのは1人だけなので、権限の話は最初から起きません。

3回目が空き時間でした。人の時間は余っているという前提が置かれていて、そこから、置き換える経済的な理由はないという結論が出ていました。私が「振る仕事はいくらでもある」と返すと、結論は丸ごと入れ替わりました。撤回されたのは判断ではなく、前提のほうです。

3回とも、確かめていないことが懸念の形で出ていました。懸念の形にすると、確かめていないことが指摘のように見えます。

この途中で2つの案を捨てました。1つは、一次面接を別の人へ渡して、その人の時間を事務に回す案です。面接を担当する前提で入ってもらった人なので、募集した条件と実態がずれます。もう1つは、AIエージェントへ置き換えられるものを外注から先に剥がす、という順序です。空きが余っているという前提の上でしか成り立たない順序だったので、前提が外れたときに一緒に外れました。

立ち上げ中の人に振るなら、手順書を先に作る

空きがあっても、そのまま移せるとは限りません。入ったばかりの人であれば、仕事を渡す前に説明が要ります。

そして説明する側は、たいてい単価の高い人です。移した作業の分だけ、高い人の時間が教えることに使われるので、移管が終わるまでのあいだは社内の合計コストがむしろ上がります。ここで効果が出ないと判断して引き返してしまうと、外注に戻る理由が一つ増えることになります。

だから、渡す前に手順書を作ります。作るのは移す側の仕事になりますが、一度作れば次に人が変わっても使えます。口で教えると、その時間は人が変わるたびに毎回消えていきます。

数えるのは、契約書ではなく人の週の使い方である

いちばん安い時間は、契約書には載っていません。すでに払い終わっていて、まだ使われていない時間だからです。それがどこにどれだけあるかは、契約の一覧ではなく、人の1週間の使い方を見ないと分かりません。

外注費の削減に手をつける前に、1週間ぶんだけ数えてみる。契約している時間のうち、実際に使われているのは何時間か。その空きに入れる仕事が、次に控えているか。この2つが見えると、いま自分がしているのが外注を削る話なのか、AIエージェントへ置き換える話なのかが分かれてきます。

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