副業が続かないのは時間が足りないからではなく、返事を待っている人がいるからである

副業を始めたい。けれど、まとまった時間が取れない。

そう思って何ヶ月も止まっている方は、多いのではないでしょうか。空いている時間はある気がするのに、いざ始めようとすると細切れで、何をやればいいのか分からなくなる。

よく言われる答えは、だいたい決まっています。1時間早く起きる。通勤中に処理する。スマホを見る時間を削る。飲み会を断る。作業する時間をカレンダーに先に入れてしまう。どれも間違ってはいませんし、実際に効く場面もあります。

ただ、この答えには共通の前提があります。足りないのは時間の総量だ、という前提です。この記事が立てる問いは、そこを疑うところから始まります。本当に足りていないのは、時間の量なのでしょうか。

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時間が足りないという診断は、症状を原因と取り違えている

早起きしても続かなかった経験があるなら、それは意志の弱さではありません。診断のほうがずれています。

1日に30分の空きが5回ある人と、まとまった3時間がある人を考えてみてください。合計はほぼ同じです。それでも、この2人ができる仕事はまったく違います。前者は3時間かかる作業を1つも終えられませんが、後者は終えられます。

時間には、量とは別に形があります。総量だけを数えると、この違いが消えます。早く起きて時間を作れという助言は、細切れの30分を5回持っている人を、まとまった時間を持つ人に変えようとする試みです。だから続きません。

隙間時間で回る仕事と、回らない仕事を分ける線がある

隙間時間で回るかどうかを決めるのは、作業の難しさではありません。相手がいるかどうかです。

30分で終わる作業でも、その先に納期があり、依頼者がいるなら、隙間時間には収まりません。連絡が来ます。修正の依頼が来ます。確認の質問が来ます。それらは、こちらが空いているときには来ません。向こうの都合で来ます。

この記事では、あなたの返事を待っている相手のことを待ち人と呼びます。ここからは私の解釈です。学説として確立された議論ではありませんので、そのつもりで読んでください。副業が続くかどうかを決めているのは、作業量ではなく、待ち人がいるかどうかだと考えています。

待ち人がいる仕事は、隙間時間には入りません。入っているように見えても、実際には本業の時間に食い込んでいます。

待ち人は、作業していない時間まで持っていく

待ち人がいる仕事の本当のコストは、作業そのものではありません。待たせている状態のほうです。

グロリア・マーク、ダニエラ・グディット、ウルリッヒ・クロッケの3氏が2008年のCHIで発表した「The Cost of Interrupted Work: More Speed and Stress」という研究があります。48名を対象に、中断されながら作業する条件と、中断されない条件を比べたものです。

この研究には、見落とされがちな発見が含まれています。中断の内容が、いま取り組んでいる仕事と関係あるかどうかは、負荷にほとんど影響しませんでした。関係のある話で中断されても、まったく別の話で中断されても、ストレスの上がり方はほぼ同じだったのです。

副業の文脈に置き換えると、これは重い意味を持ちます。依頼者からの連絡は、内容が簡単でも軽くなりません。すぐ返せる質問だから負担が小さい、ということにはならないのです。

さらに、返信していない時間も同じように効いてきます。まだ返していない連絡があると意識している状態では、本業の時間も家族との時間も、完全には自分のものになりません。作業時間は30分でも、頭の中の占有時間はもっと長くなります。

待ち人を作らない仕事は、在庫型しか残らない

待ち人がいる仕事を消していくと、選択肢はかなり減ります。

受託の仕事には依頼者がいます。相談に乗る仕事には相談者がいます。配信には、その時間に集まっている視聴者がいます。会員制のコミュニティには、参加した瞬間から答えを待つ人がいて、しかも一度作ると閉じにくくなります。どれも、待ち人がいる形です。

残るのは、先に作って置いておくものだけです。書いた記事、作ったツール、撮った写真、まとめた電子書籍、出品した商品。作る時点では誰も待っていません。置いたあとに、必要な人が勝手に見つけます。この記事では、これを在庫型と呼びます。

在庫型には、隙間時間と決定的に相性のいい性質があります。締切を自分が持っているという性質です。今日書けなければ明日でいい。誰も困りません。だから30分の空きに、そのまま入ります。

外注で解決しようとすると、待ち人が戻ってくる

時間が足りないなら人に任せればいい、という発想があります。これは在庫型を選んだ人にとっては、逆効果になります。

人に任せるということは、その人があなたの指示を待つということです。進捗の確認が要ります。品質の判断が要ります。支払いの手続きも要ります。作業は減りますが、待ち人が増えます。しかも今度は、待たせているのが取引先ではなく、あなたが選んだ相手です。断りにくくなります。

隙間時間しか持っていない人にとって、人的なレバレッジは使えない道具だと考えたほうが正確です。使えるレバレッジは、自動化と、寿命の長さの2つだけになります。

自動化は、同じ作業を繰り返さなくて済むようにすることです。寿命の長さというのは、一度作ったものが何回売れるかということです。転売は1回作業して1個売れて終わりますが、書いたものと作ったツールは、作業が終わったあとも売れ続けます。同じ30分でも、残るものを選んだほうが積み上がります。

在庫型のコストを、正直に書いておく

ここまで在庫型を勧めてきましたが、公平を期すために逆側も書きます。

在庫型は、立ち上がりが遅いです。待ち人がいないということは、締切がないということで、締切がないということは、誰にも急かされないということです。急かされない仕事は、進みません。ここは意志の問題ではなく設計の問題なので、最初の数ヶ月で辞める人が多く出ます。

収入が出るまでの期間も長くなります。受託なら納品した月に振り込まれますが、在庫型は置いてから見つけられるまでに時間がかかります。半年ほど何も起きない期間があると思っておいたほうがいいでしょう。

そして、誰にも待たれていないということは、誰にも必要とされていない状態から始まるということでもあります。反応がない期間を、手応えのなさとして受け取ると続きません。ここが在庫型のいちばん大きなコストです。

すぐに現金が必要な状況にあるなら、在庫型は合いません。その場合は待ち人がいる仕事を選ぶほうが合理的で、この記事の話は当てはまらないと考えてください。

判断基準は、その仕事に返事を待つ人がいるかどうか

副業を選ぶときに使える基準を、3つ渡します。

1つ目は、この仕事を3日放置したときに、誰かが困るかどうかです。困る人がいるなら、それは待ち人がいる仕事です。隙間時間しか持っていないなら、外したほうが無難です。困る人がいないなら、隙間時間に入ります。

2つ目は、締切を誰が決めているかです。相手が決めているなら、あなたの予定は相手の予定に従属します。自分が決めているなら、予定は自分のものです。同じ作業量でも、この違いで消耗の度合いがまったく変わります。

3つ目は、1回の作業が何回お金に変わるかです。1回作って1回で終わるものより、1回作って何度も売れるもののほうが、少ない時間で積み上がります。隙間時間しか使えない人ほど、この差が効いてきます。

3つとも、始める前に判定できます。始めてから合わないと気づくより、選ぶ前に外しておくほうが消耗しません。

よくある疑問

Q:副業を始めるには、1日どのくらいの時間が必要でしょうか。

A:必要な時間の長さより、その時間の形のほうが重要です。1日30分でも、締切を自分が持っている仕事なら積み上がります。逆に1日2時間確保できても、依頼者が返事を待っている仕事なら、確保した2時間の外側にも仕事が漏れ出してきます。総量ではなく、待ち人がいるかどうかで判断してみてはいかがでしょうか。

Q:早起きして時間を作る方法は、意味がないのでしょうか。

A:意味はあります。ただ、それは選んだ仕事が隙間時間に収まる形をしている場合に限られます。形が合っていない仕事に時間を足しても、足りない状態が続くだけです。時間を作る前に、何をやるかを選び直すほうが先だと思います。なお、睡眠を削って時間を作る方法は勧めません。

Q:在庫型は、結局稼げるようになるまで長すぎませんか。

A:長いです。そこは交換条件だと考えています。待ち人を受け入れれば早く現金になり、受け入れなければ遅くなる。どちらが正しいという話ではなく、自分がいまどちらを必要としているかで決まります。急ぎの資金が必要な時期に在庫型を選ぶのは、合っていません。

副業選びは、作業量ではなく待ち人の有無で決める

副業が続かない理由を時間の不足に求めると、対策は時間を作ることになります。早起きし、通勤中に処理し、付き合いを削る。それでも続かなかったのは、努力が足りなかったからではありません。

隙間時間しか持っていない人にとって、待ち人がいる仕事は構造的に入りません。作業は30分でも、待たせている状態が1日中続くからです。中断の負荷は内容の軽さで軽くなりませんし、返していない連絡は、返すまで頭の中を占有し続けます。

だから選ぶべきなのは、作りやすい仕事ではなく、誰も待っていない仕事です。立ち上がりは遅く、手応えのない期間も長い。その代わり、あなたの1日は誰にも明け渡さずに済みます。

あなたがいま検討している副業は、3日放置したとき、誰かが困るものでしょうか。

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