会社が長く続くために、決めておくことと決めないでおくことは何か?

会社が長く続くかどうかは、事業が変わっても続ける役目を決めて、商材や体制や職種は変えられるままにしておくかで分かれます。役目とは、その会社が誰のどんな困りごとを引き受けているかです。全てを固定した会社も、役目まで決めない会社も、環境が大きく変わったときに続きにくくなります。

しかし、役割を決めて責任者を置き、成果を数字で測るのが正しいやり方だ、とよく言われます。実際に、それで片づく問題も多くあります。ただ、役割と評価をはっきりさせると、成果が出ない時期の社員を会社が抱えておける余地は小さくなります。

この記事では、三葉虫と人類の体の違い、日本の社会の例、借金と支払いについての議論を順に並べます。

目次

三葉虫は完成度の高い動物だったが、環境の変化で絶滅した

三葉虫は、およそ2億7000万年にわたって海で栄えた動物です。それでも、環境が大きく変わったときに全て姿を消しました。

三葉虫は約5億2000万年前に現れ、約2億5200万年前に絶滅しました。外骨格と複雑な目を持ち、アメリカ自然史博物館によると2万2000種以上が見つかっています。

三葉虫が姿を消したのは、ペルム紀末の大量絶滅です。この大量絶滅では海の生物種の9割以上が消えたとされ、原因にはシベリアでの大規模な火山活動と、それに伴う海の酸性化などが挙げられています(Live Science)。

外骨格を持っていたことが絶滅の原因だと確かめられているわけではありません。完成度が高い生き物でも、環境が大きく変わると生き残れないことがあります。

人類は体を特化させず、道具を使って環境に合わせてきた

人類の体は、牙も鋭い爪もなく、毛も薄く、どれか一つの能力に特化していません。人類はその代わりに、道具を使って環境に合わせてきました。

石器で肉を切り、火で食べ物を加熱し、農耕で植物を主な食料にしました。今では北極圏から赤道直下まで、人が暮らしています。

人類は体を変えずに、使う道具を替えることで環境の変化に合わせてきました。

脊椎動物は骨格の基本設計を変えずに、体の形を変えてきた

脊椎動物には、約5億年変わっていない基本設計があります。体の内側に骨格を持ち、左右対称で、口から肛門まで続く消化管を持つという設計です。

変わってきたのは体の形です。同じ基本設計から、クジラもコウモリもヘビも生まれました。

三葉虫の外骨格は、体を支える骨格と体の外側の形を兼ねています。そのため三葉虫は、体の形を大きく変えるには、骨格から変える必要があったと思います。

長く続いた側は、変えない部分と変える部分を分けていたと思います。

日本の社会にも、一方に決めないまま長く続いた仕組みがある

日本の社会には、どちらか一方に決めないまま長く続いてきた仕組みがいくつかあります。

天皇の位が続く一方で、政治の実権は摂関家、上皇、幕府へと移りました。位を持つ側と実権を持つ側が分かれたまま、千年以上続いたことになります。

伊勢神宮は、20年ごとに社殿を建て替える式年遷宮を続けています。同じ建物を残し続けるかわりに、同じ形で建て直すことを繰り返してきました。

神仏習合では、神道の神と仏教の仏を、どちらか一方に決めずに並べて信仰してきました。決めない部分を残した仕組みが長く続いたという点で、生き物と同じことが社会でも起きていると思います。

貢献を数字にすると、決まった額を払って関係を終えられるようになる

貢献を数字で測ると、その分を払えば関係を終えられるようになります。数字で測らなければ、成果が足りない時期も数字として表に出ません。

人類学者のデヴィッド・グレーバーは、2011年の著書『負債論』で、借金は金額を正確に数えられる点でほかの義務と違うと書いています。数えられるので、借金は相手が誰かを問わないものになり、他人に譲り渡せるようにもなる、という議論です。

ある人に恩を受けたなら、その恩はその人に返すものです。一方、利息の付いた借金なら、貸し手が誰かはあまり問題になりません。

会社でも、貢献を測らなければ、成果が出なかった期間の不足も数字になりません。貢献を数字で測らない会社は、成果が出ない時期の社員を抱えたままでいられます。

役割と評価をはっきりさせると、関係を終える判断もしやすくなる

役割と評価をはっきりさせると、会社と社員が関係を終える判断もしやすくなります。成果が足りないことを、数字で示せるようになるからです。

英語の pay という語も、もともとは相手をなだめる、満足させるという意味でした。語源辞典のEtymonlineによると、1200年頃の英語 paien は「なだめる、満足させる」という意味です。

paien は古フランス語の paier を経て、「なだめる、満足させる」という意味のラテン語 pacare から来ています。pacare の元は、平和を意味する pax です。

品物やサービスの代金を払うという意味は中世ラテン語で生まれ、英語では13世紀初めに記録があります。「なだめる」の意味は、1500年頃までに英語から消えました。

測られて評価されたい人にとっては、役割と評価がはっきりしているほうが働きやすいこともあります。役割と評価をはっきりさせるときは、関係を終えやすくなることも合わせて考えておく必要があります。

役割と評価を決めないままにすると、数字で成果を出した人が報われにくい

役割と評価を決めないままにすると、損をしやすいのは数字で測れる成果を出した人です。測らない会社では、数字を出しても評価に反映されにくくなります。

また、貸し借りを数字で精算しない関係は、いつまでも終わらない関係にもなります。社員が会社から受けた恩を返し終えられず、会社を離れにくくなることもあると思います。

さらに、役割をはっきりさせないことは、社員を守るためにも、社員から多くを引き出すためにも使えます。成果を確かめないまま、会社からの要求だけが毎回はっきり増えていくなら、その曖昧さは社員を守るためのものになっていません。

会社が決めておくのは、事業が変わっても続ける役目である

会社が決めておくのは、事業が変わっても続ける役目です。その会社が誰のどんな困りごとを引き受けているのか、扱う商品が変わっても続けることは何かを決めます。

商材、体制、職種、価格、売り先は、変えられるようにしておきます。ここを固定すると、その市場が縮んだときに、会社を一から作り直すことになります。

反対に、役目まで決めないと、商材や体制を選ぶ基準もなくなります。決めておく役目と、変えてよい商材や体制を分けておくと、環境が変わっても会社を続けやすくなります。

報酬の払い方も見分ける手がかりになります。貢献を測らないまま、報酬だけを毎月決まった額で精算しているなら、社員は成果で報われず、会社に長く抱えてもらえる理由も持てないと思います。

よくある疑問

Q:役割と評価をはっきりさせると、会社は何を失いますか。

A:成果が出ない時期の社員を抱えておける余地を失います。測れるようにすると、測って足りないと判断できるようにもなるからです。

Q:何も決めない会社なら、長く続きますか。

A:続きにくいと思います。役目まで決めないと、商材や体制を選ぶ基準がなくなるからです。

あなたの会社が、環境が変わっても変えないと決めているものは何か

会社が長く続くかどうかは、変えない役目を決めて、それ以外を変えられるようにしておくかで分かれます。役割と評価をはっきりさせる場合は、関係を終えやすくなる点も先に見ておくとよいと思います。

あなたの会社が、環境が変わっても変えないと決めているものは何か、一度書き出してみてはいかがでしょうか。

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