簗和生農相が、衆院選で自分を応援しなかった首長の市と町について「道路予算を大幅にカットした」と話していた音声が報じられました。10月2日、簗農相はこの発言を認めました。
しかし、そう話したことと実際に予算を減らしたことは、別の話です。1人の国会議員に、市や町の道路予算を減らす力はあるのでしょうか。
簗農相が認めたのは、そう話したことである
何が起きたかを日付の順に並べると、以下のとおりです。
| 日付 | 誰が | 何をしたか |
|---|---|---|
| 2026年2月8日 | 有権者 | 衆院選の投票 |
| 2026年4月7日 | 国土交通省 | 2026年度の交付金の配分を公表 |
| 2026年5月24日 | 簗氏(当時は大臣ではない) | 栃木県内の会合で「那須烏山市と那珂川町の本年度の道路予算は大幅にカットした」と話した |
| 2026年10月1日 | 簗農相 | 会見で、大臣になる前の議員としての活動だとして、回答を控えた |
| 2026年10月2日 | 井林辰憲国交相 | 会見で「道路予算が削減された事実はございません」と述べた |
| 2026年10月2日 | 簗農相 | 国会内の会見で発言を認め、「誤解を招くような言いぶりだった」と述べた |
TBSが入手した音声では、簗氏は那須烏山市の道路予算を前の年より64%減らして3分の1にし、那珂川町の道路予算は54%減らした、と話しています。理由には、首長が自民党の国会議員はいらないと言ったことと、選挙の票数の2つを挙げていました。
簗農相が10月2日に認めたのは、そう話したことです。予算を実際に減らしたかどうかについては、本人の説明はまだ出ていません。
2026年度の那須烏山市と那珂川町の予算は、それぞれの議会が決めている
では、市や町の道路予算は、そもそも誰が決めているのでしょうか。市や町の予算を決めるのは、その市や町の議会です。
地方自治法第211条は、市長や町長が予算を作り、年度が始まる前に議会の議決を受けると定めています。国会議員は、この手続きに加わっていません。ただし、道路の予算には国の交付金が入っていて、その額は国が決めます。
道路予算に入る国の交付金は、国土交通省が配分を決める
市や町の道路に使われる国の交付金は、主に社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金です。この2つの交付金の配分を決めるのは、国土交通省です。流れは以下のとおりです。
| 段階 | 誰が | 何をするか |
|---|---|---|
| 1 計画を作る | 市や町、県 | 3年から5年の整備計画を作り、国に出す |
| 2 配分を決める | 国土交通省 | 計画ごとに国費の配分額を決める |
| 3 事業に充てる | 市や町、県 | 配分された国費の範囲で、計画の中の各事業に充てる |
国土交通省の栃木県分の配分資料を見ると、那須烏山市と那珂川町の道路の事業は、どちらも県や周りの市町と一緒に作った計画に入っています。国土交通省は、国費を市や町に1つずつではなく、この計画ごとに配分します。
井林国交相は10月2日の会見で、配分は「限られた予算の中で地方公共団体からの要望や事業の進捗状況、重点配分の対象の有無などを総合的に勘案して行っている」と説明しました。
簗氏が話した5月24日には、配分はもう公表されていた
ここで、発言の日付と配分の日付を並べます。簗氏が「カットした」と話した5月24日には、2026年度の配分は1か月半前の4月7日に公表されていました。
予算が減ったことに簗氏が関わっているとすれば、4月7日より前に何かがあった場合だけです。
那須烏山市長は、発言との因果関係は分からないとしたうえで、国の交付金のうち道路に使う分の1つが、大幅に減らされた額で内示されたと述べています。内示とは、国が正式に決める前に、配分額を自治体に知らせることです。一方で井林国交相は、発言のような形で道路予算が削減された事実はないと述べました。交付金が減ったことと、議員の発言で減ったことは、別々に確かめる必要があります。
配分を決める正式な手続きに、議員が加わる段階はない
最後に、問いへの答えをまとめます。国会議員には、市や町の予算を決める権限も、国の交付金の配分を決める権限もありません。自治体が計画を出し、国土交通省が配分を決める手続きの中に、議員が加わる段階はありません。
では、手続きの外から議員が国土交通省に働きかけることは、法律で禁じられているのでしょうか。あっせん利得処罰法が罰するのは、議員が頼まれて公務員に働きかけ、その報酬を受け取った場合です。報酬を受け取らない働きかけは、この法律の対象になりません。
その一方で、国家公務員制度改革基本法第5条第3項は、職員が国会議員と接触したときの記録を作り、残すための措置を講じるよう政府に求めています。見えない圧力があったかどうかを確かめる手がかりは、決まりのうえでは、国土交通省の職員が残すこの記録です。今回その記録に何が残っているかは、木原官房長官が「調査中」と述べている段階で、まだ分かっていません。
交付金の配分額は、国土交通省が毎年、計画ごとに公表しています。お住まいの市や町の道路の配分が前の年からどう変わったか、一度見てみてはいかがでしょうか。





