スマホの画面をAIが読み取り、アプリを代わりに操作する機能が出始めています。スマホに入っているAIだけでなく、パソコンで動かしているAIエージェントにスマホをつなぎ、タップや文字入力を任せることもできます。
しかし、AIエージェントにスマホを任せようとすると、どの操作をスマホでやらせ、どんなスマホを何台、どう守って用意すればよいのでしょうか?
スマホに任せるのは、公式のAPIで済まない操作だけにする
スマホを用意する前に、その操作が本当にスマホでなければできないのかを確かめます。SNSへの投稿は、スマホを使わずに、各SNSの公式のAPIで出せることが多いです。APIは、外のプログラムから投稿などを受け付けるために、SNSの運営会社が用意している窓口です。InstagramとTikTokの窓口は、以下のとおりです。
| 比べる点 | TikTok | |
|---|---|---|
| 投稿の窓口 | Content Publishing | Content Posting API |
| 出せるもの | 画像、動画、リール、カルーセル、ストーリーズ | 動画をプロフィールへ直接投稿するか、下書きへ上げる |
| 使うときの条件と流れ | プロアカウントであること。1アカウントにつき24時間で100件まで | 下書きへ上げた動画は、アプリで仕上げて投稿する |
アプリの画面をAIエージェントに操作させる形は、規約の面でも慎重さが要ります。Instagramの利用規約は、自動化された手段でアカウントを作ったり、情報にアクセスしたりすることを禁じています。Instagramから明示的な許可を得た場合だけが例外です。違反したと判断した場合は、サービスの提供を止められるとも書いています。スマホでアプリを操作させるなら、そのサービスの規約が自動での操作を認めているかを先に確かめます。
AIエージェントにつなぐスマホは、Androidにする
スマホでやらせる操作が決まったら、次はつなぐ機種を選びます。AIエージェントにつなぐなら、AndroidのほうがiPhoneより手間がかかりません。違いは以下のとおりです。
| 比べる点 | Android | iPhone |
|---|---|---|
| つなぐための準備 | 設定の「開発者向けオプション」で「USBデバッグ」を有効にする | MacにXcodeを入れ、WebDriverAgentという操作用のアプリをiPhoneに入れる |
| ケーブルなしでつなぐ | Android 11以降はWi-Fiでつなげる | iOS 16以降は、署名を確かめるためにiPhoneがインターネットにつながっている必要がある |
| 1台足すときの手間 | 同じ設定を1つ有効にする | Macで1台ずつ設定する |
台数は、アカウントごとに1台にする
機種が決まったら、台数を決めます。スマホで動かすアカウントが複数あるなら、1台に1アカウントずつ入れて、ログインの入れ替えをなくします。1台で複数のアカウントを使うと、アカウントを替えるたびにログインを入れ替える手間がかかります。
台数を増やす前に、回線の上りの速さも確かめます。動画を上げるときに効くのは、下りではなく上りだからです。私の自宅の回線は、上りも下りも700Mbps出ています。
機種は、アップデートが長く続くものを選ぶ
何台も並べて長く使うなら、機種はアップデートの期限で選びます。中古で買うなら、Pixel 8aが候補になります。動きが遅くて止まることを避けたいなら、中身の性能も見ます。Pixel 8aは、上位のPixel 8と同じTensor G3というチップを積み、メモリーは8GBです(発売時の報道)。Googleは、Pixel 8aにOSとセキュリティのアップデートを7年間出すとしています。2024年5月の発売から数えると、2031年5月ごろまで続きます。1世代前のPixel 7aは5年間なので、2028年5月ごろに終わります(Googleのアップデートの案内)。
中古の価格は、イオシスの国内版SIMフリーで、Bランクが42,800円、Cランクが36,800円でした(2026年11月3日時点)。Bランクは色ごとに70〜110台ほどの在庫があり、同じ機種・同じ状態のものをまとめてそろえられます。
端末管理に入れて、USBデバッグは許し、OSの書き換えは止める
スマホをAIエージェントにつなぐなら、守り方も決めておきます。AIエージェント用のスマホも、ほかの業務用のスマホと同じ端末管理に入れます。端末管理は、会社のスマホの設定をまとめて決め、無くしたときに追えるようにするサービスで、MDMとも呼ばれます。投稿のために使うスマホでも、DMにはお客様の情報が届くことがあります。端末管理に入れておけば、無くしたときに位置を確かめ、遠隔で中身を消せます。
端末管理の管理画面で、AIエージェント用のスマホにだけ、許す設定と止める設定を分けます。設定するのは、端末管理を受け持つ管理者です。以下のとおりです。
| 設定 | AIエージェント用のスマホ | ほかの業務用のスマホ |
|---|---|---|
| USBデバッグなどの開発者向けの機能 | 許す | 止める |
| 工場出荷状態へのリセット | 止める | 止める |
| OEMロック解除(OSの書き換えの入口) | 端末管理に入れれば押せなくなる | 端末管理に入れれば押せなくなる |
OSを書き換えるには、まず開発者向けオプションの「OEMロック解除」を有効にして、起動の仕組みのロックを外す必要があります。端末管理に入っているAndroidでは、この項目が灰色になって押せなくなります(端末管理サービスHexnodeの案内)。開発者向けの機能を止める設定はAndroidの公式の説明にあり、AIエージェント用のスマホだけ外します。USBデバッグを許しても、OEMロック解除が押せない状態は変わりません。
中古は、初期化してから端末管理に入れ、起動画面を確かめる
中古のスマホは、前の持ち主が残したものが無い状態にしてから使います。中古でも、初期化してから端末管理に入れれば、前の持ち主のアプリやデータは残りません。会社の管理にAndroidを入れるときは、初期化した状態から設定を始めるからです。
そのうえで、OSが書き換えられていないかを確かめます。Androidは、起動の仕組みのロックが外れていると、電源を入れるたびにオレンジ色の警告画面を出します(Androidの公式の説明)。届いたら電源を入れ、警告が出ずにそのまま起動するかを見て、警告が出た端末は使わずに返品します。
用意するものは、操作の仕分けから順に決まる
ここまでを、決める順に並べます。最初に操作を仕分けると、スマホの台数も機種も守り方も、そこから順に決まります。以下のとおりです。
| 順番 | 決めること | 決め方 |
|---|---|---|
| 1 | スマホでやらせる操作 | 公式のAPIで済む操作を外し、規約が自動での操作を認めているかを確かめる |
| 2 | 機種 | Androidにし、アップデートが長く続く機種を選ぶ |
| 3 | 台数 | スマホで動かすアカウントの数だけ用意する |
| 4 | 守り方 | 端末管理に入れ、開発者向けの機能は許し、OEMロック解除は押せないままにする |
| 5 | 中古の確かめ方 | 初期化して端末管理に入れ、起動時に警告画面が出ないかを見る |
まずは手元の操作を、公式のAPIで済むものと、スマホでなければできないものに分けてみてはいかがでしょうか。
