ヨーグルトを食べていいかは、種類ではなく一度に入る乳糖の量で決まる

私が調べはじめたときの出発点は、前提が2つと、問いが1つでした。成人の70%は乳糖をうまく分解できないという話。牛乳を飲める大人のほうが、DNAの変異を持っているという話。この2つを先に置いて、最後に一行だけ聞きたいことがありました。ギリシャヨーグルトも駄目なのか。

牛乳を飲むとお腹が張る、あるいはゆるくなる。それで牛乳をやめた人が次に迷うのは、ヨーグルトとチーズです。調べると、答えはだいたい揃っています。ヨーグルトなら食べられることが多い、と書いてあります。ただ、どのヨーグルトを、どれだけなら食べていいのかまでは出てきません。

乳糖不耐症という呼び名も、調べると何度も出てきます。ただ、この記事で扱うのは体質の名前ではありません。体に合うかどうかは、乳製品という種類では決まらないからです。決めているのは、その一皿に残っている乳糖の量のほうです。だから見るのは、種類ではなく量になります。

目次

ヨーグルトの乳糖は、水切りと発酵で減る

乳糖は水に溶けます。ヨーグルトの表面に出てくる上澄み、ホエイの中にも溶けています。水切りをするとそのホエイが捨てられるので、溶けていた乳糖もいっしょに出ていきます。

もう一つは発酵です。乳酸菌が、乳糖の一部を乳酸に変えます。減る割合を20〜30%とする資料もありますが、これは海外の管理栄養士のメディアが出している概算で、私は一次の資料まで当たれていません。幅のある目安として受け取ってください。

残った分にも、働くものがあります。生きたヨーグルト菌は、β-ガラクトシダーゼという酵素を作ります。この酵素が体の中での乳糖の消化を助けうると報告されています(NCBIのStatPearls「Lactose Intolerance」の章)。欧州食品安全機関も、生きたヨーグルト菌と乳糖の消化の改善について、表示を認める意見を2010年に出しています(EFSA Journal 2010;8(10):1763)。

熟成したチーズとバターには、乳糖がほとんど残らない

チーズを作る工程でも、ホエイは分けられます。乳糖は水に溶けているので、ここでも大半がいっしょに出ていきます。そのうえで熟成の時間が加わります。熟成したチーズは、乳糖を全く含まないか、ほとんど含まないとされています。

この記述の出どころは、国際酪農連盟の栄養資料を、日本国際酪農連盟が日本語に仮訳したものです。乳業の国際団体が出した資料である点は、そのまま書いておきます。立場のある側の資料なので、細かい数値ではなく、減る向きのほうを読むほうが安全です。

バターも同じ向きにあります。脂肪の側に寄せた食品なので、水に溶けていた乳糖は残りにくくなります。ただし日本の成分表から値を取り出せていないので、ここは量ではなく傾向として書きます。

目安は、一度に12gである

量の目安には、公的機関の意見書があります。欧州食品安全機関が2010年に意見書を出しています(EFSA Journal 2010;8(9):1777)。乳糖の消化がうまくいかない人の大多数は、一度に12gまでの乳糖なら症状が出ないか、出ても軽い、という内容です。

同じ意見書は、個人差が大きいことも併記しています。6g未満で症状が出る人もいます。だから12gは、全員に当てはまる線ではありません。自分がどのあたりにいるかは、量を変えて試すことでしか分かりません。

牛乳で計算すると、位置が見えます。日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版では、普通牛乳の乳糖は可食部100g当たり4.4gです。コップ1杯を200gとすると乳糖はおよそ8.8gなので、12gの下に入ります。大事なのは1日の合計ではなく一度に入る量なので、時間を空けて分ければ、1回分は下げられます。

日本の成分表に、ギリシャヨーグルトの項目はない

牛乳の数値は、すぐ取れます。文部科学省の食品成分データベースで普通牛乳を引けば、乳糖4.4gが出ます。一方でギリシャヨーグルトは、そもそも項目がありません。日本の成分表に、その名前の食品が載っていないからです。

ヨーグルトとチーズも、思ったようには取れませんでした。私は同じデータベースで、ヨーグルト全脂無糖とプロセスチーズを4回試して、1度も表示できていません。URLで食品番号を指定しても、前に見た食品のページが返ってきます。炭水化物成分表編のPDFも落としてみましたが、届いたのは説明と目次だけで、乳類の表は入っていませんでした。

だからこの記事は、牛乳の4.4gと、12gという目安だけで組み立てています。ヨーグルト1つ分やチーズ1切れ分の乳糖を、g単位で並べることはできません。できない代わりに、どちらの向きに減るのかは書けます。

確からしさの違う数字を同じ一文に並べていた

私が最初に書いた文はこうでした。ギリシャヨーグルトの乳糖は100g当たり2.5〜4g、牛乳は4.7g。数字が2つ並んでいるので、そのときは答えになっていると思っていました。あとで成分表に当てると、牛乳は4.4gでした。4.7gは、記憶から書いた数字です。

ギリシャヨーグルトの側は、もっと足元がゆるい数字でした。出どころは、豪州の管理栄養士のメディア(水切りしたもので200g当たり5〜8g)と、米国の乳業団体(1オンス当たり1g未満)です。日本の成分表の数値と同じ一文に並べると、確からしさまで揃って見えます。揃っていたのは、見た目だけでした。

ここは、この記事の弱いところです。日本で売られているギリシャヨーグルトの乳糖は、製品ごとに確かめられていません。水切りの度合いは製品ごとに違うので、同じギリシャヨーグルトという表示でも、残っている量は揃いません。数値で選べない以上、残るのは、量を減らして試すという判断だけになります。

「世界の7割」という数字の出どころは、2024年に撤回されている

私が前提として置いた「成人の70%」も、確かめていない数字でした。この系譜の数字が広く引かれるようになったのは、国ごとの推計を集めたメタ分析からです。Storhaug らが2017年に Lancet Gastroenterology & Hepatology に出した論文です。

この論文には、2024年8月に懸念表明が出され、同じ年の12月に撤回されています。同じ号の関連する論説も撤回されました。撤回の理由が書かれた本文には私が到達できていないので、理由は書きません。書けるのは、撤回されているという事実だけです。

いまも65〜70%という概算を載せている資料はあります。ただ、その概算が撤回された論文を参照していないかどうかまでは、確認できていません。だからこの記事は、割合の数字の上に組み立てていません。判断に使うのは割合ではなく、一度に入る量のほうです。

牛乳を飲める人のほうが、遺伝子の変化を持っている

大人になっても乳糖を分解し続けられる状態は、乳糖持続性と呼ばれます。この状態は欧州系の人々に多く、アフリカ・中東・南アジアの一部の集団にも見られます。それ以外の地域では、まれか存在しないとされています(Itan らの2010年の論文、BMC Evolutionary Biology)。大人が牛乳を飲めるほうが、あとから広がった側です。

関わる変化の一つは、2002年に特定されています(Enattah らの論文、Nature Genetics)。ただし同じItanらの論文は、この変化ではアフリカの多くの集団の頻度を説明できないと書いています。東アジアと北アジアのデータが乏しいことも、論文自身が明記しています。日本に住む人へそのまま当てはめられる話ではありません。

分解する力が下がること自体は、壊れたことではありません。中国と日本の集団では、離乳のあと3年から4年でラクターゼの活性の80〜90%が失われるとされています(StatPearls「Lactose Intolerance」の章)。ここで名前を増やしても、食べていい量は変わりません。戻る先は、やはり一度に入る量です。

よくある疑問

Q:ヨーグルトなら、どれでも食べていいのでしょうか。

A:多くの場合は食べられますが、どれでも同じではありません。ヨーグルトは発酵で乳糖の一部が乳酸に変わり、水を切ったものはホエイに溶けていた分も抜けています。生きた菌が、体の中での消化を助けるという報告もあります。ただしゼロにはならないので、食べていいかどうかは、一度に入る量で決まります。

Q:牛乳は、もう一生飲めないのでしょうか。

A:飲める可能性はあります。普通牛乳の乳糖は100g当たり4.4gなので、コップ1杯200gならおよそ8.8gで、12gという目安の下に入ります。一度に飲む量を半分にして、体の様子を見る方法もあります。合う量が分かれば、やめるか続けるかの二択ではなくなります。

乳製品は、種類ではなく残っている乳糖の量で選ぶ

判断の単位は量です。同じ重さなら、水を切ったヨーグルトに残っている乳糖は、牛乳より少ないと考えられます。熟成したチーズには、ほとんど残りません。そして一度に入る量が12gの目安の下に収まっているかどうかが、症状の出方を分けます。

量の話では片づかない場合もあります。症状が2週間以上続いている、体重が落ちている、便に血が混じる。このどれかがあるときは、乳糖の量では説明がつきません。消化器の内科で一度診てもらってください。乳製品を長い期間まるごとやめる前に、医師や管理栄養士に相談するという道もあります。

次に試すときは、ヨーグルトを100gだけにしてみてはいかがでしょうか。100gなら、残っている乳糖がかりに4gあったとしても、12gの3分の1です。食べたあと2時間から3時間の体の様子を、その日だけ書き留めます。それを2回か3回くり返すと、自分に合う量のあたりが見えてきます。種類で決めるのをやめて、量で決める側へ、一歩だけ移してみてください。

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