カスハラと正当な苦情の線は、苦情の内容と、手段や態様で引かれます。
その基準は、マニュアルでは「社会通念上許容される範囲」という言葉で書かれています。調剤薬局への苦情がカスハラ扱いされ、名誉侵害の訴訟になった件も、日本経済新聞が2026年10月9日に報じています。
カスハラは、3つの要素を全て満たす言動と定義されている
労働施策総合推進法33条は、2026年10月1日から、事業主にカスハラ対策の措置を義務づけています。厚生労働省は、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルで、カスハラを次の3つの要素を全て満たす言動と定義しています。
- 顧客等の言動であること
- その労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
- 労働者の就業環境が害されること
3つの要素のうち1つでも欠ければ、カスハラの定義から外れます。
言動の内容と、言動の手段や態様のうち、一方でも許容範囲を超えれば、カスハラに当たり得る
線の基準になるのは、定義にある「社会通念上許容される範囲」を超えるかどうかです。言動の内容と、手段や態様のどちらか一方でも許容範囲を超えていれば、カスハラに当たり得ると、マニュアルは書いています。 言動の内容は何を求めているか、手段や態様はどう求めているかを指します。全体は以下のとおりです。

許容範囲に収まる苦情が正当な苦情です。マニュアルは、その苦情はカスハラに当たらないと書いています。図では、言動の内容も手段や態様も許容範囲に収まる左上の領域です。要求の中身が許容範囲に収まっていても、手段や態様が超えていれば、右上の領域に入ります。
厚生労働省は、許容範囲を超える言動を、契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものと説明している
図の2つの軸にある「社会通念上許容される範囲」は、カスハラ対策の関係省庁連携会議(第5回)の資料で、次のように説明されています。許容範囲を超えた言動とは、社会通念に照らして、言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものです。
厚生労働省は、言動の内容を、顧客等が求めている内容が契約内容からして相当かどうかで判断するとしています。典型的な例として挙げられているのは、次のものです。
- そもそも要求に理由がない、または商品・サービス等と全く関係のない要求
- 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
- 対応が著しく困難、または対応が不可能な要求
- 不当な損害賠償の要求
手段や態様は、顧客等の求め方が社会通念に照らして相当かどうかで判断するとしています。典型的な例として挙げられているのは、次のものです。
- 身体的な攻撃(暴行、傷害等)
- 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
- 威圧的な言動
- 継続的、執拗な言動
- 拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)
許容範囲を超えたかどうかは、経緯や状況を含めて判断される
内容と、手段や態様が許容範囲を超えたかどうかは、言動の前後の事情も含めて、総合的に判断されます。材料になるのは、言動の目的、言動が行われた経緯や状況、言動の頻度・継続性などです。 マニュアルは、このほかに業種・業態、業務の内容・性質、行為者との関係性も挙げています。
自分の苦情に当てはめる
ここまでに出てきた基準は、自分が出した苦情にも、自分が受けた苦情にも使えます。苦情は、内容と、手段や態様の2つに分けると、図の4つの領域のどこに入るかが見えます。 内容は、何を求めたか、求められたかです。手段や態様は、どんな言い方や振る舞いだったかです。
自分が出した苦情と自分が受けた苦情を、内容と手段や態様の2つに分けて見てはいかがでしょうか。
