「才能がない」とは、習得が遅いということなのか?

「才能がない」と感じても、目標を手放す理由にはなりません。才能の差は習得に必要な回数の差として現れるので、回数を積めば、人より時間がかかっても目標に近づけます。

しかし、練習を積めば誰でも同じところに届くとまでは言えません。練習量で説明できる成績の差は、分野によって大きく違うからです。

この記事では、才能の捉え方、分野による違い、立ち上がりの遅さ、積み方、道具の使い方を順に並べます。

目次

才能は、習得に必要な回数の差として考える

才能を、生まれた時点で完成している能力と見ると、持たない人は何もできないことになります。習得に必要な回数の差と見れば、回数が多くかかる人も、回数を積んで同じ技術に届けます。

届くまでに要る時間は、人によって違います。才能を習得に必要な回数の差とみる捉え方は、一つの解釈です。研究で確かめられた定義ではありません。

成績の差のうち練習で説明できる割合は、分野によって違う

意図的な練習の量で説明できる成績の差は、分野によって大きく違います。2014年にマクナマラらが発表したメタ分析では、ゲームで26%、音楽で21%、スポーツで18%、教育で4%、職業で1%未満と報告されました。

練習量だけでは成績の差の大半が説明できない分野があります。この分析の方法には異論もあります。

同じ一つの目標の中にも、生まれつきの差が出やすい層と、学べば伸びる層があります。たとえば音楽では、音の高さを聞き分ける力に遺伝の影響が大きいことが、双子の研究で示されています。一方、和音や進行の理論は知識として学べます。運指や曲の構成は練習で上達します。

問うべきことは、この目標のどの層なら、積み重ねが成果に変わりやすいかです。

時間は学べば伸びる層に置き、差が出やすい層は道具に任せる

全力を注ぐ価値があるのは、学べば伸びる層です。理論や技術、構成のように、積み上げがそのまま成果に変わる部分に時間を置きます。

生まれつきの差が出やすい感覚を人並み以上に引き上げようとしても、見返りは小さいと思います。人に及ばない部分があることは、時間の配分を決める材料になります。その部分は、このあと触れる道具に任せられます。

立ち上がりの遅さは、能力の低さを意味しない

早い時期に結果が出なくても、それだけで能力の低さは決まりません。成長の時期には個人差があることが、脳の発達の研究で示されています。

脳画像の研究では、前頭前皮質は成人期の初めまで成熟が続くことが示されました(ゴグテイら、2004年)。2006年にネイチャー誌に載ったショウらの研究では、知能が非常に高い群の皮質は、幼児期には薄く、11〜12歳ごろまで厚くなり続けてピークに達しました。平均的な群のピークは8歳ごろでした。

ただし、早い時期の成績の遅れが後の伸びを予測できるかは、紹介した2件の研究では調べていません。個人の診断に使える結果でもありません。

積み方を変えれば、速さで及ばなくても近づける

何ができていないかを見極め、そこに的を絞り、進め方を整えてから量を重ねると、速さで及ばなくても目標に近づけます。入口の段階では、まず数をこなします。数をこなす中で、何が重要かが分かり、効果的な打ち手が見えてくるからです。

つまずく場所を見つけてから、回数を重ねる

先に正しい形を整え、それから回数を重ねます。逆にすると、整っていない形のまま反復して、あとから直しにくいくせがつきます。

整えるとは、つまずく場所を見つけて、そこだけに向き合うことです。全体を漫然と繰り返すより、できない一か所を切り出して扱うほうが、時間を使う先が絞れます。録音や模試のように、自分の状態を外から測れる仕組みを持つと、直すべき点がはっきりします。

形が整ったら、無理のない範囲で回数を重ねます。言葉の記憶課題では、学習の間隔をあけたほうが、一度に詰めるより長く覚えていられることが、複数の実験を統合した研究で示されています(セペダら、2006年)。指の運動課題では、練習のあとに睡眠をはさむと上達が大きくなることが示されています(ウォーカーら、2002年)。腱や体を痛めない範囲にとどめることも、続けるためには欠かせません。

足りないところは、道具に補ってもらう

感覚の鋭い人なら一度で決められることも、道具と手順を使えば、同じ結果を出せます。

チューナーやメトロノームは音程やリズムのずれを数字や音で確かめられるようにし、録音は自分の演奏を聞き返せるようにします。これらを使うと、自分の力が足りない分を補えます。道具を使うことに、引け目を感じる必要はありません。目的は最終的な成果です。内側の力だけで出す必要はありません。

才能という言葉を、あきらめる理由にも頑張り不足の理由にも使わない

才能ですべて決まると考えれば、努力する前から諦める言い訳になります。努力ですべて決まると信じれば、報われなかったときに、すべてを自分の頑張り不足のせいにしてしまいます。

生まれつきの要素も積み上げも結果に関わり、その比率は目指すものによって違います。そのため、目標を分けて、どこに時間を置くかを決めることが、取れる行動になります。

自分の目標を層に分けてみる

いま目指しているものを、学べば伸びる層と、差が出やすい層に分けて書き出してみてはいかがでしょうか。時間を置く先と、道具に任せる先が見えてきます。

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